The Crane's Gift of Thanks

鶴つるの恩おん返がえし

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むかしむかし、雪ゆきの深ふかい山やまのふもとの村むらに、与よひょうという貧まずしい若者わかものが住すんでいました。

ある寒さむい日ひ、与よひょうが薪たきぎを売うりに町まちへ行いく途中とちゅう、一羽いちわの鶴つるが罠わなにかかって苦くるしんでいるのを見みつけました。鶴つるは逃にげようとして羽はねをばたばたさせていましたが、足あしに縄なわがからまって、動うごけませんでした。

「かわいそうに。」

与よひょうは、そっと罠わなをはずしてやりました。鶴つるは何度なんどか振ふり返かえりながら、空そらへ飛とんでいきました。

その夜よる、与よひょうの家いえの戸とをたたく音おとがしました。開あけてみると、雪ゆきの中なかに、美うつくしい娘むすめが立たっていました。

「道みちに迷まよってしまいました。どうか、今夜こんやだけ泊とめてください。」

与よひょうは、娘むすめを家いえに入いれて、あたたかい食事しょくじを出だしました。ところが、雪ゆきがやんでも、娘むすめは帰かえろうとしません。そして、ある朝あさ、こう言いいました。

「わたしを、あなたの妻つまにしてください。」

与よひょうは驚おどろきましたが、娘むすめの優やさしさに心こころを動うごかされ、二人ふたりは夫婦ふうふになりました。

暮くらしは、あいかわらず貧まずしいままでした。ある日ひ、娘むすめは言いいました。

「布ぬのを織おりたいと思おもいます。ただし、織おっている間あいだは、決けっして部屋へやの中なかをのぞかないでください。」

娘むすめは部屋へやに入いり、三日間みっかかん、出でてきませんでした。戸との向むこうから、とん、とん、からり、からりと機はたを織おる音おとだけが聞きこえました。四日目よっかめの朝あさ、娘むすめは、見みたこともないほど美うつくしい布ぬのを持もって出でてきました。ずいぶんやせて、疲つかれた顔かおをしていました。

与よひょうがその布ぬのを町まちで売うると、思おもっていたよりずっと高たかい値段ねだんで売うれました。商人しょうにんは目めを丸まるくして言いいました。

「こんな布ぬのなら、いくらでも買かいたいです。もっと織おってもらえませんか。」

家いえに帰かえった与よひょうは、お金かねがもっと欲ほしくなってしまいました。娘むすめに頼たのむと、娘むすめは悲かなしそうな顔かおをしましたが、小ちいさくうなずきました。

「わかりました。でも、これが最後さいごですよ。今度こんども、決けっして見みないでくださいね。」

娘むすめは、また部屋へやに入いりました。しかし、今度こんどは五日いつかたっても、出でてきません。与よひょうは、心配しんぱいなのと、あの美うつくしい布ぬのがどうやってできるのか知しりたいのとで、じっとしていられなくなり、とうとう、戸とを少すこしだけ開あけてしまいました。

そこにいたのは、娘むすめではありませんでした。一羽いちわの鶴つるが、自分じぶんの羽はねを一本いっぽんずつ抜ぬいては、それを糸いとの代かわりに機はたにかけていました。体からだの羽はねは、もうほとんど残のこっていませんでした。

鶴つるは、与よひょうに気きづくと、悲かなしそうに言いいました。

「見みてしまったのですね。わたしは、あの日ひ、あなたに助たすけていただいた鶴つるです。ご恩返おんがえしがしたくて、人ひとの姿すがたになって、ここへ来きました。でも、正体しょうたいを見みられてしまったので、もうここにはいられません。」

鶴つるは、織おりあがった布ぬのを与よひょうに渡わたすと、大おおきな翼つばさを広ひろげました。与よひょうは、あわてて手てを伸のばしましたが、鶴つるはもう、雪ゆきの空そらの高たかいところにいました。

与よひょうは、鶴つるが見みえなくなるまで、いつまでも空そらを見上みあげていました。お金かねが欲ほしくて約束やくそくを破やぶったことを、深ふかく後悔こうかいしました。しかし、鶴つるは二度にどと戻もどってきませんでした。

それから与よひょうは、雪ゆきの降ふる日ひになると、鶴つるが飛とんでいった空そらを見上みあげるようになったということです。

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JLPT-style reading questions. Pick the best answer.

  1. Q1

    与よひょうが鶴つるの罠わなをはずしてやったのは、なぜですか。

  2. Q2

    「でも、これが最後さいごですよ」の「これ」は、何なにをさしていますか。

  3. Q3

    「じっとしていられなくなり」とありますが、与よひょうがそうなったのはなぜですか。

  4. Q4

    鶴つるが「悲かなしそうに」言いったのは、なぜですか。

  5. Q5

    与よひょうが最後さいごに後悔こうかいしたのは、何なにですか。

Words in this story

Tab-separated, two columns. Paste into Anki.

貧しい	まずしい — poor
若者	わかもの — young man
罠	わな — trap
決して	けっして — never (with a negative)
織る	おる — to weave
布	ぬの — cloth
値段	ねだん — price
正体	しょうたい — true identity
翼	つばさ — wing
後悔	こうかい — regret
恩返し	おんがえし — repaying a kindness
約束	やくそく — promise

Grammar review

Patterns from this story. Find them again as you reread.

  • ようとする

    try to / be about to X

    鶴は逃げようとして羽をばたばたさせていましたが…

  • ところが

    but unexpectedly

    ところが、雪がやんでも、娘は帰ろうとしません。

  • 決して~ない(けっして~ない)

    never; not at all

    ただし、織っている間は、決して部屋の中をのぞかないでください。

  • ほど

    to the extent of; about as much as

    四日目の朝、娘は、見たこともないほど美しい布を持って出てきました。

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