Dinner at the Hot Spring Inn
休日の旅館の晩ごはん
連休に、友だちの美咲と温泉旅館に泊まりました。部屋は広くて、窓から紅葉の山が見えます。お風呂は大きいだけでなく、お湯もとてもやわらかくて、わたしは二回も入りました。
夕食は六時からです。部屋のテーブルに、小さな器がたくさん並びました。どれもきれいですが、名前がまったくわかりません。料理の言葉も勉強しておけば、わかったのに。わたしはそう思いながら、お茶を飲みました。
仲居さんが、にこにこして入ってきました。
「こちらは、箸休めでございます。どうぞごゆっくり。」
そう言って、仲居さんは部屋を出ていきました。わたしと美咲は、顔を見合わせました。
「はしやすめ。お箸を休めるんだよね。」
「うん。休まなければならないんだと思う。」
二人はお箸を置いて、まっすぐ座りました。五分たっても、十分たっても、仲居さんは来ません。料理は少しずつ冷めていきます。
十五分後に、仲居さんがもどってきて、びっくりした顔で言いました。
「まだ召し上がっていないんですか。料理が冷めてしまいますよ。」
「でも、お箸を休めるんですよね。」
仲居さんは、おなかを押さえて笑いました。
「箸休めは、お箸を休める時間ではありません。口の中を休ませる、小さな酢の物のことです。」
わたしの顔は、赤くなりました。
次に来たのは、きれいな刺身でした。
「お造りです。」
と言われて、わたしはまじめに聞きました。
「この料理は、自分で作るんですか。」
「いいえ。お造りは、刺身のことです。」
「でも、『作り』と言いましたよね。」
仲居さんは、また笑いました。
「これは、もう作ってありますよ。」
美咲は、あまりにもおかしくて、お茶をこぼしてしまいました。
最後に、小さな釜が運ばれてきました。
「釜飯です。蓋は、あと十分、開けないでください。蓋を開けるべきではありません。」
「十分ですね。わかりました。」
でも、いい匂いが、蓋のすきまから出てきます。おなかがすいていたわたしは、あまりにもいい匂いに我慢できなくて、三分で蓋を開けてしまいました。白い湯気がぶわっと上がり、ご飯はまだ少しかたいままでした。
「だから、開けるべきではないって言ったのに。」
美咲が、笑いながら言いました。もう一度蓋をして、十分待ちました。ご飯はふっくらとして、とてもおいしかったです。
帰る日の朝、仲居さんが玄関まで見送ってくれました。
「わからない言葉は、いつでも聞いてくださいね。聞くのは、少しも恥ずかしいことではありませんよ。」
仲居さんは、やさしいだけでなく、おもしろい人でした。わたしは、わからないときは、すぐに聞くべきだと学びました。あのとき、もっと早く聞けば、あんなに恥ずかしくなかったのに。でも、あの箸休めの十五分も、ちょっと楽しかったです。
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JLPT-style reading questions. Pick the best answer.
Q1
仲居さんは、「箸休め」をどんな料理だと言いましたか。
It is a small vinegared dish to rest the mouth. 「口の中を休ませる、小さな酢の物のことです。」
Q2
「箸休め」と言われて、二人はどうしましたか。
They put down their chopsticks and sat up straight. 「二人はお箸を置いて、まっすぐ座りました。」
Q3
「お造り」とは、何のことですか。
Otsukuri means sashimi. 「お造りは、刺身のことです。」
Q4
「わたし」は、どうして釜飯の蓋を三分で開けてしまいましたか。
She could not resist the good smell. 「あまりにもいい匂いに我慢できなくて、三分で蓋を開けてしまいました。」
Q5
この旅行で、「わたし」が学んだことは何ですか。
When you don't understand, ask right away. 「わたしは、わからないときは、すぐに聞くべきだと学びました。」
Words in this story
Tab-separated, two columns. Paste into Anki.
温泉旅館 おんせんりょかん — hot spring inn 仲居さん なかいさん — waitress at a Japanese inn 箸休め はしやすめ — small side dish between courses お造り おつくり — sashimi (polite) 釜飯 かまめし — rice cooked in a small iron pot 器 うつわ — dish, bowl 酢の物 すのもの — vinegared dish 湯気 ゆげ — steam 我慢する がまんする — to endure, hold back 見送る みおくる — to see someone off 冷める さめる — to get cold 恥ずかしい はずかしい — embarrassing
Grammar review
Patterns from this story. Find them again as you reread.
だけでなく
not only X but also Y
お風呂は大きいだけでなく、お湯もとてもやわらかくて、わたしは二回も入りました。
ば~のに
if only X, (but it didn't happen); complaint
料理の言葉も勉強しておけば、わかったのに。
ずつ
X each (distributed)
料理は少しずつ冷めていきます。
べきだ / べきではない
should / should not
わたしは、わからないときは、すぐに聞くべきだと学びました。
あまりにも
excessively; so much that
美咲は、あまりにもおかしくて、お茶をこぼしてしまいました。
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